ひとひらの愛

独断と偏見とポエム

蝶ネクタイとリボンタイ

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わーひさしぶり! 元気だった? えーめちゃくちゃうれしい! っていうか、前に会ったのいつだっけ……? WORLDISTA? やば、19年の春? ほぼ3年前じゃん! いろいろあった……うん、いろいろあったね。元気だった? 仕事……は、大変だったよね。そうだよね……。まだ暫くは大変?だよね、きっと。でもピーク時よりは良くなったなら、良かった。ふつうに皆の体調が、コロナもだけど、激務的な意味で心配だった。でもほんと、Storyオーラス配信あって良かったよね。皆で観るのってこういう感じか~~ってなんか、新鮮だった!

わたし? うん、入ったよ~横アリの初日と、その次の城ホと、あと札幌2公演。あんまり大きな声で言えないけど……。そう初日ね! 友達が復活で当ててくれたんだよ~~~あらゆる人に「過激派初日厨の執念だ!」と言われながら……w しかもたまたまオタクと一緒にいてさぁ……あの日、本当は北海道のはずだったけど飛んじゃったから、一緒に行くはずだった友達と円盤みようか?ってなって。円盤見てたら復活当選のメールが来て、大騒ぎだった。騒いじゃだめなのに。初日が横アリになった時点で絶対見つからないと思ってたから、うれしいを超えてパニックだよね。でも見れて良かった。

てごちゃんがいなくなってからさ、Happy Liveもそうだし、あれ何年だ、2020年?あ、本当の方のw 本当の2020年の夏もGo to使って円盤合宿とかしてて、もう毎回お葬式状態だったからね。ジャニーズ・手越祐也を偲ぶ会。「お葬式は残された人のためにあるものだから、何回やったっていいんだよ!」って言いながら、その度に号泣。「#NEWSは4人でNEWS」状態ですよ。エモハッシュタグとか大嫌いなのに、やむなし。わたしは「帰ってくればいいのに~~~~~」ってずーっと言い続けてて。「今ならまだ間に合うよ!」「まだ間に合うよ!?」って。まぁ、増田さんが絶対許さないだろうけど……。だよね……。だから、横アリはいよいよ現実だなぁって。もう本当に本当に3人なんだなって。そもそも現場がひさしぶりすぎるから変なテンションだし、現実感なかった。天気も曇ってるけどあったかくて、しかも終わってもお店もどこもやってないしさ。無事に家に帰れる自信がなかったから、友達と品川にホテル取ったんだよね。次の日も仕事が朝早くてしかも品川直行だったから、もう部屋押さえちゃおうと思って。

 

でもStoryは最初から大好きになった! 自分の中ではWORLDISTAのテンションがすごく低くて……何だろうな、EPCOTIA無印のオーラスがやっぱり最高で、ある意味ピークだったかもしれない。あの日のSSAの、「もしかして、NEWSもう一段階いけるのでは?」みたいな気持ち、あったよね。追い風がめちゃくちゃ来てる!! って。その後の文春砲からのガタガタで、気持ちが追い付かないまま味スタが終わって、ドリフェスは楽しくてちょっと浮上して、EPCOTIAアンコールの京セラが最高で、でも年明けてドームのてごにゃんはすっごい顔してて、何かあるのかな? みたいな。ちょっと不穏だったよね、あの時。もう、ちょっと考え始めてたのかなぁ……というか……そうか、そうだね。「考えてる」で言えば、ずっと「考えてた」んだよね、きっと。で、15周年が忙しすぎたから、「一回休んでもいいから次の作品はじっくり作ってほしい!」って思ってた矢先のWだったから。時間なくない? って。あと曲と演出にあんまりはまれなくて……。ある意味、Wの直後からが一番テンション低かったかも。加藤さんはNEWSを「終わらない青春」って言ってたけど、わたしの中では文春砲~EPCOTIAアンコールまでで、一回青春は終わった!(笑) あのEPCOTIA無印のときみたいな、脳がびりびり痺れるみたいに「好き」って思うことは、たぶんもうないだろうな。青春が終わって、次は大人としてどこまでNEWSを好きでいられるかだな、って。Sが良くなかったら……増田さんがいる限りは降りることはないけど、優先順位は下がるかもしれないなって思ってたもん。

でもそうなんだよね……そもそもHappy Liveが良かったんだよね~~!! 友達が「あれが4人NEWSの最後のコンサートだったんだね」って言ってて、たしかに! と思ったもん。そこに立ってはいなかったけど、てごにゃんが「居ることになってる」コンサートだなって。すごく意思を感じて。だから、Wで下がったテンションが本当に戻ってきたのはHappy Live。セトリも良かったし、こやしげの歌も良かった。あと、まっすーがセンターなのにやっぱりグッときて。そのときはまだ慣れてないし、4人NEWSの亡霊みたいになってたけど、増田さんがセンターになったのだけは、よかったなって思った。アイドルの神様が「もう一歩前に!」って、ドンッて増田さんの背中を蹴ったんだ。

 

ごめん何だっけ、Storyの初日だよね。いやもうセットと演出がとにかく好き!映像もいいし、 照明が最高。一曲目から良くて、EPCOTIAのオープニングを思い出した。照明だけで泣くやつ。あのセンステのシャンデリアみたいな制御照明と、サイドの紗幕が下りてきたときに「勝った!!!!!」って思ったもんね。わたしの大好きなNEWSが帰ってきた!!!って。一曲目のStoryから泣いてたの、「大好きなNEWSが戻ってきてうれしい」の泣きだったな、たぶん。「戻ってきた」とかいうと失礼だけど。で、その後もところどころ泣きっぱなし。まぁ、何を聞いても何かを思い出すよね。「生きろ」で初披露のMUSIC DAYを思い出して泣くし、U R ではNEVERLANDを思い出して泣くし、初めて生で聴くアルバム曲も、全部歌詞が刺さるし。もう「君」が全部てごちゃんにしか聞こえない。夢の先に夢描いたのは手越祐也だし、また明日ねって言ったのになぜかいないし、夢をめざす祐也に幸あれだし、「何でいないの!?」ってずっと思ってた。NEWSはこんなにかっこいいのに! まぁ辞め方よね。4部作までは絶対やってほしかったよ、やっぱり。極めつけはクローバーね。「ずっと同じ景色見てきたね」は反則だよ……。あれ、映像は一昨年作ってたわけでしょ? 手書きの歌詞だけでも見たかったな……。途中から、手越パートのAメロは皆、手拍子するようになってさ。あそこ、声出しがOKだったら、絶対皆歌ってたよね。だから、希望Yellだけじゃなくてクローバーの「永遠に君に幸あれ」は、やっぱり「永遠にてごちゃんに幸あれ」って意味だと思っちゃうと思うの、これからもずっと。絶対幸せになれよーーーーーって。幸せにならないとゆるせないよ。

終了後はもう皆泣きすぎて虚脱状態で、なぜかわたし新横浜駅までずっとペンラ握りしめたまんまだったからね……(笑)。ペンラをしまうのすら忘れてた、情緒がグチャグチャすぎて。お葬式であり、卒業式であり、でもあれ現場で、有観客で観れて良かったと思う。年末に無観客の配信で観てたら、たぶんちょっと納得いかなかったと思う。それこそ現実感がないというか。うん、ごめんね……来れなかった人もいっぱいいるツアーだから、言い方が難しいんだけど……。美恋の秩父宮って、現場行った人はこんな感じだったのかな?とちょっと思ったんだよね。会うことに意味があったし、あの場だったからわかったことが、メンバーもファンもあったと思う。

 

遠征?いやもちろん悩んださー! あのとき、大阪めちゃくちゃ感染拡大してる時期で。しかもお譲りで単身遠征だったから、スッと前乗りして、スッと見てスッとご飯食べてスッと帰ったよ。ちょうど城ホの桜がお濠沿いに全部満開で、お天気もすごく良くて、それこそ夢みたいだったな。しかも席もスタンドの前列で見やすくて! 良席だったのもあるけど、横アリで一回しぬほど泣いて出し切ったから、城ホはもう少し作品自体を楽しめて、やっぱりStory好きなコンサートだなって思った。このときから、3人なんだなっていうのも、なんか肌で理解できたというか……。もちろんさびしいし、いてくれるならいてほしいけど、もう3人は一回覚悟を決めた後なんだなって思うと、いつまでも「4人……」と言い続けるのもなぁ、って。でもそういう気持ちになれたのは、純粋にコンサートが良かったからだと思う。あ~……そうね、歌はね~~ ! 特に前半戦は、やっぱり新しく割られたところのこやしげははらはらしたねぇ……。そうそう、初日も「まじですみません……」という気持ちだった、手越担と入ったのもあって。「努力型なので、徐々に良くなっていくと思うんで……」みたいな……。誰目線? って感じですけど。でも実際札幌はすごく良くなってたんだよ! モボで鍛えられたのもあったのかな? あ~~そうだよね、モボも見れてないんだもんね……!? 歌良かったんだよ! 見てほしかったな。今回やっぱり遠征とか、東京でも他担の人は自粛してくれた人多かったよね、きっと。しばらくプレガにチケットあったもん。でも素敵だったよ、モボの歌も。

札幌もねぇ……何で緊急事態宣言出さないの? って言われてた時期で、札幌の友達の名義が当たったんだけど、その子は職場NGで結局参加できなかったの。空席も多かったね。いっこいっこ、諦めた人ごとの気持ちと葛藤があったんだなぁと思うとつらいよね……。アリーナ最前が4連で空いてたりするんだよ!? でも空席、全然気にしないよってことをメンバーが言ってくれて。全体的に頼もしい印象だったかも、札幌は。演出も照明の手数が格段に増えてて。大阪からほぼ1か月半ぶりだったからさ。すごくブラッシュアップされてて、初日も2日目もたのしかった。真駒内は初日なことが多いから、一番多く入ってる会場だし、思い出も多いし、本当に大好きな場所だから、迷ったけど行けてよかったよ。すすきののお店はほぼ5月いっぱいまで休業してて、行きつけがいくつかあるんだけど、開いてないお店が多かったから、ご飯もいちから全部調べて、テイクアウトでホテルで食べて。ちょっと忘れられない旅だったね。

 

……わかる! 全部、絶対何年後かに「Storyのときさぁ……」「2020ね」「2021だけど2020のねw」「17月だからね!」って皆で言ってるよね。一生言う。横アリ終わったあとも言ってたんだけど、わたしはずっと「エモ嫌い」「エモはもういい」「エモ飽きた」って言い続けてて、でもStoryは作ったエモじゃなくて単にエモ、みたいな……。エモくならざるを得ないやつ。でもかっこいいところはちゃんとかっこいいじゃない? いやあの青衣装ね!? わかる!!! ゴリゴリパート! あのパート嫌いなオタクいない。あと増田さんの胸。あーでもStoryセトリも良いんだけど、一個だけ不満があって何でエプのアルバム曲ないの!? っていう。汽車の「ポッポ~」もドラゴンの「バサッ」もあるんだからさ、エプコティアライナーがピューンってくると思ったのに……。言うたらDragonismのところ、AVALONかIT'S YOUでもよくない? いやDragonismは好きなんだけど。それかFIGHTERS.COMじゃなくてブラホかジャンパランでもよくない?? いやFIGHTERS.COMも好きだけどねw わかった、削らなくていい! 削らなくていいからエプ曲を入れてほしい……。エプが好きすぎるんだよね、これはもうしょうがない。あーベージュスーツね、ベージュスーツの話しよう! ベージュスーツ思い出しただけで頭抱える。

あ、ごめん、おかわり頼む? ていうかもうさ~、たのしいね、幸せだね。そもそも今日会ってハグできたのもめちゃくちゃうれしかったし、こうやって曲とか演出とか衣装の話を肴に飲めるのももうすごいうれしい。 去年はね、TLが亡霊みたいに「オタクと飲みたい」「オタクと語りたい」「現場で叫びたい」って……(笑)。わたしも「来年は絶対皆で東京ドームで会おうね~~」ってつぶやいたもん、ガイシのオーラスの日。うれしいね。今回アルバムもめちゃくちゃ良いし! 癖強くないコンサート、楽しみすぎる。申し込み、多分来月じゃない? わたしは初日とオーラスと、あいだどこか行けたら地方……うん、いつも通りの。絶対会おうね。入れたら一緒に入ろうね! 連絡するわ。……そう、ベージュスーツだった。いやベージュスーツは歴史に残すべき。蝶ネクタイとリボンタイ。

 

 

お題「NEWS LIVE TOUR 2020 “STORY“ ー私のSTORY、私とSTORYー」

 

中村安未果は最高の女 ―もしくは、加藤シゲアキと冷蔵庫の女

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「この作家の書く女には、母親と恋人の二種類しかいない」という批判の仕方があるのを知ったとき、その対象が誰だったのかはもう忘れた。大学の映画論の講義だったか、文学論の講義だったか。存命の日本の男性作家だったとは思う。

あれから15年近く経ったけれど、日本の(いや、世界の……?)男性作家を取り巻く状況は、そんなに変わっていないように思える。いかに第三国の、英語圏外の、マイノリティの、女性作家による「世界文学」がノーベル文学賞レースの本選として加熱していこうとも。書店に入って平台に並ぶ作品たちを手に取れば、男性作家の物した小説の中の女性のうち、はたして何割が同性から見ても魅力的だろう。そのうち何分が、「母親的な包容力」と「恋人的な魅力」の両方から自由だろう?

 

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天才の横顔

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人生で一度だけ、テストでカンニングをしたことがある。塾の特待生試験での話だ。

大学受験のために通っていた学習塾には特待生制度があって、試験で一定以上のスコアを取った生徒は一年間の授業料が免除された。その代わり国立大学、早慶上智東京理科大等の指定校をいくつか受験し、「●●大学合格者○名!」という、あのよく見る広告の数字を稼いでくることを義務付けられる。それは当時高校生のわたしの目には、フェアな取引に映った。試験は高校二年生から三年生になる年の春休みを挟んで週末ごと実施され、合格するまで何回も受けることができる。科目は英語・国語・数学の3教科。基準点や得点は発表されず、合格者の名前だけが週明け廊下に貼り出された。試験の結果如何によって入塾を決める生徒もいたし、わたしはもともと高校一年生のときからその塾に通っていたので、家計を助けられるなら助けたい、くらいの気持ちで受験していた。「中高と私立に通ったんだから、大学は国公立」というのが親と交わしていた約束で、どのみち国立大学は受けなければならない。英語と国語は得意だけど数学は苦手という典型的な文系生徒だったわたしは、2回受けて2回落第しており、点が足りないのは数学だけだと自覚していた頃、Nくんに出会った。

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燃え尽きるまで

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地元駅の新幹線ホームに降りるとき、いつも自然に少し背筋が伸びる。歩いているだけでいつ誰に会うかわからない緊張感もあって、あの頃の自分に「こんなに大人になったのよ」とつっぱる気持ちもあって。18歳で飽きて出てきた街。地元愛は薄い方だ。用事がない限りはほぼ帰らないし、その「用事」も年々、家族や友人に会うためというより、推しのための遠征とか、仕事のための出張とか、「あの頃の自分」理由から「大人の自分」理由にシフトしている。でも今年は「用事」が多くて、冬に祖父が亡くなった。春に仕事が入った。夏は自担が司会を務める「いのちのうたフェス」の公開収録に参加するために、早めの休みをとって新幹線に乗った。手元に観覧はがきは届いていなかったけど、去年もそれで諦めて東京に残っていたら意外に現地では見つかったという話を後から聞いて、「後悔するくらいなら行くだけ行こう」と仕事を調整したのだ。 あの日からずっと、加藤さんの顔が見たかった。言葉が聞きたかった。それを生でできる場があるなら、ましてやそれが地元なら、みすみす逃す手はなかった。

 

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君が一番疲れた顔が見たい

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生まれて初めて、付き合っている、と言っちゃいけない人と付き合っている。べつに恋愛の話がすごく好きなわけじゃないけど、人と話をすること自体がとても好きなわたしにとって、これは当初想定以上にややこしい縛りプレイで、自分の思考や行動を相互に関連づけて現在地を語るスタイルに慣れすぎているせいで、彼――仮にKとしよう――のこと抜きに、今の自分の思考や行動を語るのはほとんど不可能に近い。

たとえば友達や仲の良い同僚と、最近はだいぶ暖かいからテラスのあるお店ばかり選ぶんだけど、ビールを飲みながら仕事の話をしようと思っても、恋愛の話をしようと思っても、映画の話をしようと思っても、本の話をしようと思っても、Kの話はそのすべての裏にぴたっと張り付いていて、切り離すことができない。誰にも背中を見せずに街を歩くことができないみたいに、Kのことを抜きに何の話もできないのに、しちゃいけないから、わたしにしてはキレのないストーリーだなぁと内心で相手に申し訳なく思いながら人と話すようになって、早くも半年経つ。できすぎた偶然の連続で築いた関係性だし、今この瞬間も夢ではないかと疑っているし、相手のメリットがわからない点を除けば詐欺だと言われても驚かない。でもとにかく半年経ったから、記念に書いておきたいのだ。誰にも言えないKの話を。 

 

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雷鳴と星閃

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コンサートについての感想を書くのは難しい。同じツアーでも、各公演によって微妙に演出やメンバーのコンディションは違って、そこに同じ時間はひとつとてないし、同じ公演でも、座席によってやはり目に映る世界は180°どころでなく違って、もっと言えば同じ席でも、見る側の担当やそのツアーで入ってる公演回数やグループに対する解釈によってやっぱり見える世界はがらりと違う。そんな前提のなかで、それでもわたしたちは同じ時間に同じ場所に集まり、再会を喜び、会いたかったね会いたかったよと繰り返し確認し合い、束の間の時間を共有して、それを糧にまた一年を頑張ったりする。何度でも何度でも、一昨年も昨年も今年も、たぶん来年も。

 

昨年、NEWS LIVE TOUR 2017 ”NEVERLAND” の感想、というか「人はいかにして神と出会い、奇跡を『奇跡』として雷のようにその身に受け、信仰にめざめるのか」を書いたけど、宗教としての増田貴久と名付けたその記事ももちろん長いツアーの中のある日の公演の、一面しか切り取っておらず、「箱推し」とか言いつつわたしの推し事の9割がしげとかますとかで埋められているのはこの際許してもらうとして、ツアーを通してずっと考えていたにも関わらずまったく触れられていないのは、実は慶ちゃんのことなのだ。 

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借り物の魂で

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会いたかった人とほぼ一年ぶりに会って、ハイになって一晩中喋ってシャンパンでフラフラの身体で帰宅して寝て起きて、お風呂に入ってもまだフラフラな頭で、ベッドにゴロンゴロンしながら読んだ横槍メンゴちゃんの新刊『めがはーと』に追い打ちをかけられるようにガツンと殴られて、今年の冬はやってきた。起毛のパジャマもくたくたの毛布も湯たんぽも、一瞬で無効化するように背筋を冷やす心理描写こそが、この作家の真骨頂だ。横槍メンゴという人が一貫して追ってきた(と、わたしは勝手に思っている)「誰かを想う気持ちの醜さ/美しさ」というテーマはこの作品の中でも、どこまでもかわいいあの繊細な筆致で徹底的に描かれていて、ぬくぬくとしたベッドの中にいてなお単行本を持つ指先がちょっと震える。「まじかよ……」とかつぶやいてしまう。

『めがはーと』は夫婦(やそれに準じる近しい関係性の人々)が、互いに寿命を「譲渡」できる世界を舞台にした連作短編で、そのいくつかは雑誌掲載時に読んでいたのだけど、まとめて読むとミルフィーユみたいに各話の隙間から感情の層が溢れ出て、もう一口ごとに醜さ!美しさ!醜さ!美しさ! と、一話一話読んでたときとは比べものにならないぐらい、贅沢な味がした。そういえば前作『クズの本懐』は読みながら、むしゃくしゃして甘いものを食べまくって満たされたあと、ちょっと胸焼けして気持ち悪くなるあの感じ、がよくこみ上げた。人を好きになることは、まるで自分の身体にいま足りてない栄養分をがつがつ補うような、身勝手さと暴力性がある。

 

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